蛭ヶ谷の田遊び
開催日
2023年2月11日(土)開催地
静岡県牧之原市蛭ヶ谷 蛭児神社みどころ
年の初めに稲作の過程を模擬的に演じて、稲の豊作を祈願する予祝行事、「蛭ケ谷の田遊び」。
神社境内に積み上げられたおかがりへの点火を合図に、夕刻から夜更けまで5時間以上かけて行われます。
全演目を通じて楽器は使用せず、演じ手の掛け声や唱え、所作によって進行していきます。
おかがりへの点火
まずは、田遊びの開始を告げる「おかがり」に点火されます。
田遊びでは、計17の演目(15演目+番外2演目)が伝承されています。
舞手は、神に代わる者として頭に白い綾傘を被っており、来訪した神々が稲作過程を演じて見せるという演出になっています。
番外.矢納め
和紙に三重の輪を描いた的に向かって矢を射ます。
1.ほた引き
中央に日扇を持つ親方が鳥居を向いて立ち、その周りを約24mの藁縄を持った若者が取り囲みます。
そして、親方の唱えに合わせて、ぐるぐる縄を引き回します。
縄には、杉の束で作った「ほた小僧」と呼ばれる人形を結わえます。
この「ほた小僧」は稲魂(いなだま)の象徴とされ、稲魂を呼び寄せる演出が行われます。
2.里田打ち
中央に置かれた桶を田に見立て、鍬に見立てた新竹を打ち付けながら、次々と神々の名前を唱えては田打ちを行っていきます。
3.本刀振り
右手に半開きの扇、左手には本物の刀(現在は模擬刀)を持ち、数回飛び跳ねます。
その後、刀を振り下ろしたり、反り返したりする所作を、東西南北それぞれに向かって行います。
これは「四方切り」といわれ、舞台となる境内を清め、悪霊を追い払う結界を施す意味があります。
3番の「本刀振り」から7番の「杵振り」まで、この「四方切り」が続けて行われます。
4.もどき
本刀振りと同様の所作が、刀を木刀に代えて行われます。
足の運びや四方を回る方向が、本刀振りとは逆になっています。
5.長本刀振り
5尺ほどある長柄の長刀を持って、四方切りなどの所作を行います。
6.木長刀振り
採り物を木製の長刀に持ち替えて、四方切りなどの所作を行います。
木長刀を飛び越える「からす飛び」と呼ばれる所作を見ることができます。
7.杵振り
男性を象徴するとされる杵を持ち、四方切りなどの所作を行います。
8.獅子
現在は行われていません。
9.田打ち
田打ちは、田打ち、昼飯、田打ちの3部構成になっています。
田打ちでは、鍬を担いだ親方役1人、徳長役2人の計3人が、本殿前の石段を田に見立て、唄いながら鍬を石段に振り下ろします。
昼飯では、カジメを載せた高盛飯などを使って、豊作を祈念する所作や唱えを行います。
10.牛ほめ
親方と徳長の2人が、牛(牛役)の背中に牛の鞍餅を載せて、牛ほめの唱えを行います。
11.鳥の口
親方と徳長の2人が杉束を持って向き合い、水口祝いの唱えを行います。
杉束は、苗代草や緑肥となる草を見立てたものと考えられています。
12.御草押し
親方と徳長の2人が向き合い、神々の名前を唱えながら杉束を左右交互に振ります。
13.麦搗き
おっとう役と孕み女(はらみめ)役の2人が、臼に見立てた桶を挟み、唄いながら交互に杵で桶をつきます。
また、孕み女が使った帯や肌着を身につけると子が授かるといわれています。
14.麦洗い(魚つり)
孕み女が川で麦を洗っていると、魚釣りに来た2人の殿が魚を釣り上げるという内容の演目です。
15.田植え
おっとう、おっかあ(孕み女)、守(子守役)、早乙女3人の計6人が輪になって、唄いながら苗に見立てた杉の葉をむしって田に植える真似をします。
子守役が背負っているのは「ほた小僧」で、稲魂の成長が祈念されています。
16.稲刈り
菅笠を被った男3人が、木製の鎌を持ち、唄いながら稲刈りを行います。
17.蓬莱山
現在は行われていません。
番外.ほた小僧を桜に結わえる
田遊びの演目が全て終了すると、ほた小僧は社殿の脇にある桜の幹に、ほた引きの縄で結わえられます。
これは、稲魂が寄り付くとされる桜の木に、稲魂を返す儀礼です。
そして春になり、桜の花の咲き具合で稲の作柄を知るというお花見に、このほた小僧が繋がっていると考えられています。
開催情報
開催日
2023年2月11日(土)
開催場所
静岡県牧之原市蛭ヶ谷 蛭児神社
稲作の過程を模擬的に演じ、豊作と子孫繁栄を祈願する、「蛭ケ谷の田遊び」。
鎌倉時代から伝えられ、鳴り物を使わず、古くからの所作が今に伝えられています。
2012年に国の重要無形民俗文化財に指定。
住所
静岡県牧之原市蛭ヶ谷1 (蛭児神社)
アクセス
車 / 東名高速道路「相良牧之原インター」より約10分
電車 / JR東海道本線 金谷駅から萩間線バス 「JA萩間支店」下車 徒歩約3分