まつりの遺伝子
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まつりの遺伝子

松例祭しょうれいさい

開催日

2022年12月31日(土)~2023年1月1日(日)

開催地

山形県鶴岡市 出羽三山神社(ではさんざんじんじゃ)
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みどころ

出羽三山(ではさんざん)のひとつ、羽黒山(はぐろさん)山頂で毎年大晦日から元旦にかけて夜を徹して行われる松例祭。

別名、歳夜祭(としやまつり)。

 

出羽三山は修験道の山。

1,400年を超える歴史の中で育まれた類まれなる信仰形態をもつ山です。

羽黒山(はぐろさん)・月山(がっさん)・湯殿山(ゆどのさん)の総称で、江戸時代から「西の伊勢参り・東の奥参り」と称されるほど人気が高く、「西の伊勢神宮を参拝したら、東の奥(出羽三山)にも参拝しなさい」といわれてきました。

※年4回行われている、入峰修行(にゅうぶしゅぎょう)の冬の峰の結願行事として松例祭は現代に受け継がれています。

※入峰修行は春の峰、夏の峰・秋の峰・冬の峰の年4回行われています

 

松例祭で行われる大松明引き(おおたいまつひき)は、2014年に国の重要無形民俗文化財に指定されました。

 

 

 

位上(いじょう)と先途(せんど)

 

出羽三山神社の門前町・手向(とうげ)地区の羽黒山伏(はぐろやまぶし)の最高位・松聖(まつひじり)。

古くからこの地区では、松聖になることは最高の名誉とされています。

氏子の中から2名「位上」と「先途」が任命され、毎年9月24日から100日間、五穀豊穣や天下泰平を祈願する冬の峰に挑みます。

その冬の峰の満願の日である大晦日に行われるのが松例祭なのです。

 

 

出羽三山神社の斎館には明治以降の「位上」と「先途」に任命された松聖の氏名が並びます

 

 

 

 

 

庄内地方の冬の風物詩といわれる松の勧進(かんじん)は、伝統行事のひとつ。

「位上」と「先途」の修行のひとつとして、羽黒山伏たちと庄内地方を勧進して回ります。

法螺貝の音とともに羽黒山伏が訪れた家では、お米あるいは初穂料(はつほりょう)を奉納します。

羽黒山伏は人々の家内安全・無病息災を願って「位上」と「先途」がご祈祷した御札を渡します。

 

 

 

 

幣立祭(へいたてさい)

 

 

 

幣立祭は毎年9月24日に行われます。

「位上」と「先途」が任命された2名の松聖が、100日間修行する冬の峰の始まりの日です。

この修行の間は、肉や魚を一切口にせず、刃物を体にあてることができないため、髭も剃ることができません。

 

出羽三山神社の斎館の神前には今年任命された「位上」と「先途」、既修松聖たち、神社の宮司など約40名が参集し厳かに斎行されます。

「位上」と「先途」は、この日より100日間、庄内の五穀豊穣と家内安全を願い、自宅に祭壇を構え、田小屋に模った興屋聖(こうやひじり)に五穀を納め、99日間にわたり穀霊(こくれい)の憑依を祈り、籠(こも)りの行を行います。

 

 

任命式の様子

 

 

 

 

斎館の門前には「位上」と「先途」の松聖の名を記した梵天が高々と掲げられます

 

 

 

 

 

 

松例祭

 

 

松例祭は「位上」と「先途」の松聖が、毎年9月24日から100日間、五穀豊穣や天下泰平を祈願する冬の峰の満願の日となる大晦日から元旦にかけて行われます。

国の重要無形民俗文化財に指定されている「大松明引き」は、午後10時45分頃から行われます。

 

 

◆祭りの スケジュール

・12月31日

 

午前11時 / 松聖移動

「位上」と「先途」の松聖が小聖を伴い、参籠していた斎館から祈祷所となる補屋へ移動します。

補屋に着くとそれぞれの頭衆に迎えられ神拝を行います。

その後、「先途方」の頭衆が「位上」の松聖へ、次に「位上方」の頭衆が「先途」の松聖へ挨拶に伺います。

それが済むと双方の若者衆も同様に挨拶へ伺います。

 

午後3時:綱まき行事 / 庭上

ツツガムシに見立てた大松明を切り刻み、松聖が参拝者にまく行事です。

この綱を家の軒先にかけると悪魔払いになると伝えられています。

 

午後6時:大松明まるき直し / 庭上

「位上方」・「先途方」に分かれた若者衆が、競いながら綱まきによって切り刻まれた大松明を復元します。

 

午後7時:綱さばき / 補屋

燃え盛る薪火を囲んで各町の若者頭が、大松明引きに用いる4本の綱をめぐり駆け引きなどしながら話し合いをします。

 

午後8時30分:砂はき渡し / 補屋

各町の前年に綱付(つなつけ)を奉仕した若者「網延(つなのべ)」と本年奉仕する「網付」が、松聖から大松明を焼き払うための雪穴を掘る祭具「砂はき」が授与されます。

 

午後9時:験競べ(げんくらべ)習礼 / 三神合祭殿

 

 

午後10時45分から行われる神事のリハーサルです。

「位上方」・「先途方」に属する12名によって、「烏とび」や「兎ぱね」が行われます。

本番は大松明引きと時間が重なるため、こちらの見学も可能です。

 

午後9時:検縄行事・砂はき行事 / 庭上

「砂はき」を手にした「綱延」と「綱付」は、庭上の松明小屋の前に行き整列。

監査役の出役(しゅつやく)は、大松明を焼き払う場所までの33尋(ひろ)を測ります。

尋は約 1.818 mの長さの単位。

33尋は羽黒の領土とされた東33ヶ国になぞらえた距離のことで、領土の外で悪鬼を焼き払う必要があるため検縄で場所を定めます。

距離を確認し終わると「綱延」は、「砂はき」で大松明を焼き払うための雪穴を掘ります。

「綱付」は相手方から「砂はき」を奪われないよう防御します。

掘り終わると、そのまま補屋へ駆け戻ります。

 

午後9時:御定目(ごじょうもく) / 補屋

大目付が事前に若者頭から出されていた誓約書を、小聖と若者頭に不正をしないよう読み聞かせ確認する。

 

午後10時45分:験競べ / 三神合祭殿

 

 

「位上方」・「先途方」の験者(けんじゃ)12名がそれぞれ6名ずつ東西に並び、5番目には松聖の代役である小聖が座ります。

1人ずつ「烏とび」を行い、神前に向かい一列に並びます。

この舞い上がる優美さと高さで1年の日照を占います。

 

 

次に所司前(しょしまえ)の側で兎に扮した者が、所司前の合図に合わせて中央の2つの案(小机)の間に入ります。

「位上方」・「先途方」それぞれの祭員長(さいいんちょう)が交互に名を呼ぶと、呼ばれた験者は前に進み出て扇子で案を叩きます。

兎は音のした案に手をのせますが、この身振りで遅速を示します。

そして5番目に位置するどちらかの小聖の所作が終わると、大目付は法螺(ほら)役に験競べが終えたことを告げる法螺を吹かせます。

6名中の5番目は立春の土用を意味することから、「五番法螺(ごばんのほら)」は冬を追い出したことを告げる合図なのです。

 

午後10時45分:大松明引き/庭上

三神合祭殿から「五番法螺」の音が聞こえてくると、庭上で待機している若者衆は、一斉に大松明を走って引き出し、砂はき行事で雪を掘った場所で焼き払います。

そして若者衆は、引き綱を担いだまま後ろを振り向かないで補屋へ走り、そのまま引き綱を担いで下山します。

この勝敗は大松明を立てる速さと燃え具合で決まります。

 

・1月1日

午前0時:火の打替え神事/庭上

 

 

新年を迎えた庭上には大歳神(おおとしのかみ)を迎えるための鏡松明(かがみたいまつ)が立てられます。

アホウによって火が灯され、新しい火を切り出すための神事が行われます。

 

午前0時45分:御披露/三神合祭殿

「火の打替え神事」終了後、松打・若者頭・大目付は三神合祭殿に行き、大目付が「大松明引き」と「火の打替え神事」の結果を宮司に報告します。

判定の結果、「位上方」が勝つと豊作に、「先途方」が勝つと豊漁になるといわれています。

 

午前0時45分:昇神祭(しょうじんさい)/補屋

「火の打替え神事」終了後、カド持ちは補屋へ行き「大松明引き」と「火の打替え神事」の結果を松聖と小聖に報告します。

その後、祭員長が昇神祭を行い、松聖が100日間守り続けてきた興屋聖の中の五穀の種を国土に見立てた補屋の土間にまきます。

 

 

 

これからも絶やすことは出来ない松例祭

 

コロナ禍になって松例祭は本来の形で出来なくなっています。

そう話をするのは、出羽三山神社・参事の吉住登志喜(よしずみ としき)さんです。

 

 

「位上」と「先途」が任命された松聖たちは本来、最初の50日間は自宅で参籠(さんろう)し、後半の50日間は斎館で参籠するのですが、コロナ禍になって80日間を自宅参籠、12月13日からの20日間が斎館での参籠となりました。

感染リスクもあるので、致し方ありません。

 

松聖になれるのは、氏子内・手向地区在住の選ばれた者だけです。

年齢でいうと還暦以後位(61歳)です。

ただ今後は、手向在住の者だけでは若者が続かないという現状もあります。

コロナ禍になって規模縮小も余儀なくされて、その課題が更に拍車がかかりました。

手向在住の者だけではなく枠を広げるという検討も始めました。

いろいろな事を想定しなくてはなりません。

 

出羽三山の根幹であるこの松例祭を、これから先も絶やすことは出来ません。

その時代その時代に合わせて変えながら、我々は祈りを止める事無く、未来に残さなくてはなりません。

開催情報

開催日
2022年12月31日(土)~2023年1月1日(日)

 

 

開催地
山形県鶴岡市 出羽三山神社(ではさんざんじんじゃ)

 

 

1,400年を超える歴史の中で育まれた類まれなる信仰形態をもつ出羽三山(ではさんざん)のひとつ、羽黒山(はぐろさん)山頂では、毎年大晦日から元旦にかけて夜を徹して松例祭が行われます。

冬の入峰修行(にゅうぶしゅぎょう)「冬の峰」の満願の日の大晦日、その結願行事として行われます。

国の重要無形民俗文化財に指定されている「大松明引き」は、午後10時45分頃から行われます。

 

 

住所
山形県鶴岡市羽黒町手向羽黒山

 

 

アクセス
車/山形自動車道「庄内あさひインター」より車で40分
電車/JR羽越本線 鶴岡駅より羽黒山頂行きバスで50分

アクセス